財務報告を自動化するInScope、1450万ドル調達

財務報告を自動化するInScope、1450万ドル調達 おすすめAIツール

財務報告の手作業を減らすAIツールが登場

企業の決算業務に携わったことがある方なら、財務諸表の作成がどれほど時間のかかる作業かご存知でしょう。数字の転記、フォーマットの調整、過去データとの整合性チェック。特に上場企業が四半期ごとに提出する10-Qや年次報告書の10-Kは、GAAP(米国会計基準)への準拠が求められるため、細心の注意が必要です。

InScopeは、こうした財務報告業務をAIで自動化するプラットフォームです。創業者のMary AntonyとKelsey Gootnickは、物流スタートアップのFlexportなどで会計業務の非効率性を肌で感じ、2023年にこのサービスを立ち上げました。今回の資金調達はNorwestが主導し、Storm VenturesやLightspeed Venture Partnersなども参加しています。

何ができるツールなのか

InScopeの中心機能は、財務諸表のドラフト作成とレビューの自動化です。従来は会計士がWordやExcelで手作業で作成していた財務諸表を、AIが過去のデータをもとに自動生成します。たとえば、前年度の財務諸表があれば、その数値や構成を自動的に引き継いで今期分のベースを作ってくれます。

特に注目すべき機能が3つあります。1つ目は「前年データの自動ロールフォワード」。過去の財務諸表から継続的な項目を自動で引き継ぐため、ゼロから作る手間が省けます。2つ目は「開示アシスタント」。必要な開示項目を提案してくれるので、見落としのリスクが減ります。3つ目は「スマートフォーマット」。数字の桁区切りやドル記号の配置といった細かい書式設定を自動化します。創業者によれば、ドル記号の配置だけで全体の作業時間の20%を消費することもあるそうです。

さらに、レビュー段階では「レビューアシスタント」がエラーを自動検知し、外部データとの一貫性をチェックします。監査証跡も自動で記録されるため、後から「誰がいつ何を変更したか」を追跡できます。これにより、レビュー時間が最大70%削減されると同社は主張しています。

既存ツールとの違い

財務報告の分野には、WorkivaやDonnelley Financial Solutionsといったレガシーツールがすでに存在します。これらも財務諸表の作成を支援しますが、依然として手作業の部分が多く残っています。InScopeの強みは、創業者が実際に会計業務を経験しており、現場の痛みを理解している点です。

たとえば、多くの会計士は変化を嫌う傾向があります。新しいツールを導入するには、既存のワークフローを大きく変えないことが重要です。InScopeはWordやExcelといった使い慣れたツールとの連携を重視し、置き換えではなく「補完」を目指しています。このアプローチが、CohnReznickのような大手会計事務所の採用につながりました。

完全自動化にはまだ課題も

ただし、InScopeがすべてを自動化できるわけではありません。損益計算書や貸借対照表の完全自動生成は、まだ実装されていない機能です。現時点では、ドラフト作成とレビューの支援が中心で、最終的な判断は人間が行う必要があります。

また、価格や日本語対応については公開されていません。主に米国市場をターゲットにしているため、日本企業や日本のフリーランス会計士がすぐに使えるかどうかは不明です。とはいえ、GAAPに準拠した財務報告のノウハウは国際的に応用可能なため、今後の展開に注目する価値はあります。

フリーランスにとっての意味

このツールは主に企業の経理部門や会計事務所向けですが、フリーランスの会計士やコンサルタントにも関係があります。もしあなたが中小企業の財務サポートを行っているなら、クライアントにこうしたツールの導入を提案することで、作業効率を大幅に改善できる可能性があります。

特に、四半期ごとの財務報告が必要なクライアントを抱えている場合、InScopeのようなツールは作業時間の短縮に直結します。ドラフト作成が60%速くなれば、その分だけ戦略的な分析やアドバイスに時間を使えます。結果として、クライアントへの提供価値が高まり、報酬アップの交渉材料にもなるでしょう。

一方で、完全自動化が進むと、単純な財務諸表作成業務の需要は減る可能性があります。今後は「AIが生成したドラフトをレビューし、経営判断に必要な洞察を加える」というスキルが求められるようになるかもしれません。ツールに置き換えられる部分と、人間にしかできない部分を見極めることが重要です。

今後の見通し

InScopeは今回の資金調達で顧客基盤を5倍に拡大し、大手会計事務所との取引も増やしています。財務報告の自動化は、企業にとってコスト削減と正確性向上の両方を実現できる分野です。そのため、今後も同様のツールが増えていくでしょう。

ただし、会計業務は規制が厳しく、完全な自動化には時間がかかります。当面は「人間とAIの協働」が主流になると考えられます。フリーランスとして生き残るには、こうしたツールを使いこなし、付加価値の高いサービスを提供することが鍵になります。

まとめ

InScopeは財務報告の自動化を進める興味深いツールですが、日本のフリーランスがすぐに導入できるかは不明です。しかし、財務業務の自動化トレンドは世界共通です。似たようなツールが日本でも登場する可能性は高いため、情報収集を続けておくと良いでしょう。特に会計やコンサルティング分野で働いている方は、クライアントへの提案材料として覚えておいて損はありません。

参考リンク:TechCrunch – InScope nabs $14.5M to solve the pain of financial reporting

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