Grammarly、著名人模倣AI機能で訴訟に発展

Grammarly、著名人模倣AI機能で訴訟に発展 AIニュース・トレンド

無許可で著名人の名前を使った新機能

Grammarlyは2025年3月上旬、有料サブスクライバー向けに「Expert Review」という新機能をリリースしました。この機能は、Stephen KingやCarl Sagan、Kara Swisherといった著名な作家やジャーナリストの編集スタイルをAIが模倣し、ユーザーの文章に対してフィードバックを提供するというものです。

一見すると魅力的に聞こえるかもしれません。憧れの作家から編集のアドバイスをもらえるなんて、ライターにとっては夢のような話です。しかし、Grammarlyはこれらの著名人から事前に許可を得ていませんでした。この問題が表面化すると、ジャーナリストのJulia Angwinが先導してクラスアクション訴訟を起こす事態に発展しています。

実際のフィードバックは一般的な内容

訴訟問題とは別に、この機能の品質にも疑問が投げかけられています。テックジャーナリストのCasey Newtonが実際に自分の記事をツールに入力してテストしたところ、Kara Swisherとして模倣されたAIからのフィードバックは「日常的なAIユーザーとAI懐疑派がリスクをどう表現するかを簡潔に比較して、読者が追えるような流れを作れますか?」という内容でした。

Newtonはこれをあまりにも一般的な内容だと指摘し、なぜGrammarlyがわざわざこれらの著名人の外見や名前を使う必要があったのかという疑問を提起しています。実際、この程度のフィードバックなら、通常のAIツールでも提供できるレベルです。著名人の名前を冠する必要性がまったく感じられない内容だったわけです。

当事者たちの反応

無断で名前を使われた著名人たちは、強い不快感を示しています。原告となったJulia Angwinは声明で「私は何十年もかけてライターおよびエディターとしてのスキルを磨いてきた。テック企業が私の長年の専門知識のなりすまし版を販売していることを知り、非常に悲しんでいる」と述べました。

Kara SwisherはCasey Newtonへのテキストメッセージで「この強欲な情報・アイデンティティ泥棒たちよ、私が全力で向かっていく準備をしておけ。それと、あなたたちは最悪」と怒りをあらわにしています。AI倫理研究者として知られるTimnit Gebruも無断で含まれていたことが判明しており、皮肉にもAI倫理の問題を追及してきた研究者が、無許可でAIに利用される側になってしまいました。

Grammarlyの親会社SuperhumanのCEO、Shishir Mehrotraは、LinkedInで機能を無効化したことを認め謝罪しましたが、同時に機能のコンセプト自体は擁護しています。彼は「あなたの教授があなたのエッセイを磨き、営業リーダーが顧客へのピッチを再構成し、思慮深い批評家があなたの議論に挑み、または一流の専門家があなたの提案を高める場面を想像してみてください」と述べ、専門家とユーザーをつなぐ機会としての可能性を強調しました。

AIツールと肖像権・パブリシティ権の問題

この訴訟の核心は、プライバシー権とパブリシティ権の侵害です。著名人の名前や評判は、その人が長年かけて築き上げた資産です。それを無断で商業利用することは、法的に問題があるだけでなく、倫理的にも疑問が残ります。

特に今回のケースでは、年間144ドルという有料サービスで著名人の名前を使っていた点が重要です。Grammarlyは著名人の名前を使うことで付加価値を高め、より高い料金を正当化しようとしたと考えられます。しかし、実際のフィードバックの質は、その名前に見合ったものではありませんでした。

AI技術が進化する中で、こうした「なりすまし」や「模倣」の問題は今後も増えていくでしょう。企業がAIを使って著名人のスタイルや声を再現しようとするとき、どこまでが許されるのか。この訴訟は、その境界線を問う重要な事例になりそうです。

フリーランスライターへの影響

フリーランスのライターやエディターにとって、この事件は二つの意味で重要です。一つは、自分の編集スタイルやスキルが無断でAIに模倣される可能性があるということ。もう一つは、こうした「著名人の名前を借りたAIツール」の実際の品質が疑問視されているという点です。

もしあなたがGrammarlyの有料プランを検討していたなら、この「Expert Review」機能は現在無効化されているため、使うことはできません。また、仮に復活したとしても、今回明らかになったように、フィードバックの質は期待するほどではない可能性が高いです。年間144ドルという料金を考えると、費用対効果は慎重に判断する必要があります。

一方で、自分のスキルや編集スタイルを守るという観点では、この訴訟の行方は注目に値します。もし企業が無断で専門家のスタイルを模倣できるとなれば、長年かけて培ってきたスキルの価値が損なわれる可能性があるからです。Julia Angwinのように、自分の専門性を守るための行動が必要になるかもしれません。

まとめ

Grammarlyの「Expert Review」機能は、技術的には興味深い試みでしたが、倫理的・法的な配慮を欠いていました。現在は機能が無効化されており、訴訟の行方も不透明です。フリーランスのライターとしては、こうした「著名人の名前を使ったAIツール」に過度な期待をせず、実際の品質を冷静に見極める姿勢が大切です。また、自分のスキルや専門性を守るためにも、AIと知的財産権の問題には関心を持ち続けることをおすすめします。

参考リンク:訴訟文書(英語)

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