ChatGPT内ショッピング機能の挫折
2025年9月、OpenAIはShopify、Etsy、Stripeと提携して、ChatGPT内で直接商品を購入できる機能を発表しました。会話の流れで「このワイヤレスイヤホン、いいね」と思ったらそのまま購入できる、というアイデアです。Amazonや楽天のように別のサイトへ移動する手間がなく、スムーズな買い物体験を目指していました。
しかし実際には、参加した小売業者はわずか十数社にとどまりました。大手でもInstacart、Target、Expedia、Booking.comなど限られた企業だけです。さらに深刻だったのは、ユーザーの行動パターンでした。多くの人がChatGPTで製品の情報を調べたり、比較したりするものの、実際に購入ボタンを押す人はほとんどいなかったのです。
この状況について、OpenAIは2026年3月に戦略の見直しを発表しました。ChatGPT内での直接購入処理を中止し、パートナーアプリへ誘導する形に変更するというものです。つまり、ChatGPTはあくまで「調べる場所」として機能し、実際の購入は各アプリで行う流れになります。
なぜユーザーは買わなかったのか
この失敗には、いくつかの理由があります。まず、ユーザーの信頼の問題です。多くの人はAmazonや楽天など、使い慣れたサイトで買い物をする習慣があります。ChatGPTで商品情報を得ても、「念のため他のサイトでも確認しよう」と考える人が多かったようです。特に価格比較サイトやレビューサイトでの確認を経てから購入する、という行動は根強く残っています。
技術的な障壁もありました。OpenAIは小売業者ごとに個別のオンボーディングプロセスを設けていたため、参加のハードルが高かったのです。さらに、米国の州ごとに異なる消費税の処理システムが整っていなかったことも、スムーズな購入体験を妨げる要因になりました。
コンバージョン率のデータも厳しい結果を示しています。OpenAIの内部データによれば、ChatGPT経由の購入率は、Google検索やメール経由と比べても低い水準にとどまりました。調べる場所としては便利だけれど、買う場所としては選ばれなかったということです。
収益化への圧力
OpenAIはIPO(株式公開)を控えており、収益源の多角化が急務となっています。ChatGPT Plusの月額課金だけでは十分な収益が見込めず、コマース事業への期待は大きかったはずです。しかし今回の挫折により、広告収入やアプリパートナーからの手数料といった、より地道な収益モデルへの依存が強まることになりました。
一方でOpenAIは、StripeとともにAgentic Commerce Protocolの開発を継続しています。これはAIエージェントが代理で商品を購入する際の標準規格を作る取り組みです。将来的には、ユーザーが「来週のパーティー用にワインを選んで買っておいて」と指示すれば、AIが自動で購入まで完了する世界を目指しています。ただし、この構想が実現するのはまだ先の話です。
フリーランスへの影響
この動きは、フリーランスの方々にとってどんな意味を持つでしょうか。まず、ChatGPTを製品リサーチのツールとして使う分には、今後も十分に活用できます。例えばWebデザイナーの方が「クライアント向けのストック写真サービスを比較して」と聞けば、わかりやすくまとめてくれます。ライターの方なら「SEOツールの最新比較」といった情報収集にも使えるでしょう。
ただし、ChatGPT内で直接購入できる便利さは当面期待できません。結局のところ、ChatGPTで調べた後に、各サービスの公式サイトへ移動して契約や購入を行うことになります。これは従来のGoogle検索と大きく変わらない流れです。
eコマース関連のフリーランスの方、例えばShopifyでクライアントのストアを運営しているような方にとっては、ChatGPTとの連携機能が縮小される可能性があります。当初期待されていた「ChatGPT経由の新しい販路」は、少なくとも現時点では現実的な選択肢ではなくなりました。クライアントから「ChatGPTで売れるようにしたい」と相談されても、効果は限定的だと伝えざるを得ません。
今回の戦略転換が教えてくれるのは、AIツールの新機能が発表されても、実際に定着するかは別問題だということです。ユーザーの行動習慣や信頼の壁は、技術だけでは簡単に乗り越えられません。フリーランスとして新しいツールを導入する際には、発表当初の期待だけでなく、実際の利用状況を見極めることが大切です。
まとめ
ChatGPTのコマース機能は、当面は「調べる」用途に留まり、「買う」場所としては機能しないことがはっきりしました。フリーランスの方は、引き続き情報収集ツールとしてChatGPTを活用しつつ、実際の購入や契約は従来通りの方法で進めるのが現実的です。Agentic Commerce Protocolの進展には注目する価値がありますが、実用化までは時間がかかりそうです。今は様子見の段階と言えるでしょう。
参考リンク:The Decoder – ChatGPT users research products but won’t buy there


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