「AIを使うためにアプリを切り替える」時代が終わるかもしれない
スマートフォンでAIを使うとき、あなたはどんな手順を踏いていますか。メールを書いていて、「この文章、もう少し丁寧にしたいな」と思ったとき、多くの人はいったんメールアプリを離れ、ChatGPTやGeminiのアプリを開き、テキストを貼り付けて、結果をまたコピーして戻ってくる——そんな作業をしていると思います。地味に面倒なこの「往復」をなくそうとしているのが、新しいキーボードアプリ「Acti」です。
Actiは、スマートフォンのキーボードそのものを、AIエージェントへの入口として設計しています。iOSとAndroid双方に対応しており、一度インストールして既定のキーボードとして設定すれば、どのアプリを使っている最中でもAIの機能を呼び出せるようになります。メッセージアプリ、Instagram、Gmail、どこで文字を打っていても、キーボード上からAIに指示を出してタスクを実行できる仕組みです。
「補助」ではなく「行動」するキーボード
これまでのAI搭載キーボードといえば、GrammarlyやWordtuneのように、書いた文章を修正・提案してくれる「アシスト型」が主流でした。確かに便利ですが、あくまで「書いたものをよくする」という補助の域を出ません。
Actiが目指しているのは、それとは少し違う方向性です。同社が「Skills」と呼ぶ機能では、キー一つで複数のステップからなるタスクを自動的に実行できます。たとえば、受け取ったメッセージを別の言語に翻訳してすぐに返信する、会議のリンクを文章に整形して即座に共有する、といった「動作」をキーボード上で完結させることができます。
また、自然言語でカスタムワークフローを作れる点も特徴のひとつです。コードを書く必要はなく、英語で「このメッセージを受け取ったら、こういう形式で返信する文章を作って」と指示するだけで、自分専用のショートカットが完成します。フリーランスのクライアント対応や、営業メールのやり取りなど、パターンが決まっている作業との相性は良さそうです。
技術的な背景とプライバシーへの配慮
Actiが採用しているAIモデルは、GoogleのGeminiです。多言語対応の幅広さ、処理速度と精度のバランス、そしてコスト効率を考慮して選ばれたとのことで、日本語でも使えることが期待されます。ただし、日本語に特化した最適化が行われているかどうかは現時点では明らかになっていません。
気になるプライバシーの面では、ユーザーの個人的なコンテキスト情報はデフォルトでデバイス内に保存される「ローカルファースト」の設計を採用しています。キーボードはあらゆる入力を通過するだけに、どこにデータが送られるかは重要なポイントです。この設計方針は、ビジネスの機密情報を扱うフリーランスにとってひとつの安心材料になるでしょう。
価格については現時点で未公表で、リリース直後は無料で使えるか、早期アクセスの段階にある可能性が高いです。料金体系が明示されていない点は、継続利用を検討する際に注意が必要です。
注意しておきたい点
現状、Actiの機能はGeminiモデルに完全に依存しています。今後、GoogleがGeminiの仕様を変更したり、APIのポリシーを変えたりすれば、Actiの動作にも影響が出る可能性があります。また、キーボードを別アプリに置き換えるという性質上、使い慣れるまでに少し時間がかかることも考えられます。iOSでは特に、サードパーティ製キーボードの権限設定が複雑なケースもあるため、最初の設定には少し余裕を持って取り組むのが良いでしょう。
日本語での動作については、Geminiの多言語対応に依存しているため、英語での操作と比べてスムーズさに差が出るかもしれません。日本語ユーザー向けの最適化がどの程度されているかは、実際に試してみるのが一番の確認方法です。
フリーランスへの影響
Actiが特に役立ちそうなのは、スマートフォンでのやり取りが多いフリーランスです。クライアントへの返信、SNSでのDM対応、見積もりメールの作成——これらを移動中やすき間時間にスマートフォンでこなしている人にとって、アプリを行き来する手間が減るだけでも体感的な作業効率はかなり変わります。
たとえば、英語のクライアントからメッセージが来たとき、その場で翻訳して返信文を作り、そのまま送信できるとしたら、これまで数分かかっていた作業が1分以内に収まるかもしれません。カスタムのSkillsを組み合わせれば、定型文の送信や情報のまとめ作業も自動化できます。
一方で、パソコンをメインにしているフリーランスには、現時点ではあまり直接的な恩恵はないかもしれません。あくまでスマートフォンのキーボードに特化したツールであるため、デスクワーク中心の人には「補完的なツール」として位置づけるのが現実的です。スマホでの業務割合が高い人ほど、試してみる価値があるアプリといえます。

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